もう20年になるだろうか。
右左右左と繰返し繰返し、働いてきた。
動く事を前提として、もちろん動けなくなったら捨てられる。
新人が入った事もあるが、すぐに、別の部屋に行ってしまった。
あいつは元気にしているだろうか。
私はと言えば、もう上を向く気力もない。
正面を向いているだけで精一杯なのだ。
気を抜くとすぐに下を向いてしまう。
それでも動き続けた。
右左右左、みぎひだり、みぎひだり。。
「下を向いていては、意味が無い!」と首筋を捕まれ強引に上を向かされるが、首筋から手が離れたとたん、ガクンと下を向いてしまう。
首に紐を巻かれたり、粘着テープを貼って固定された事もあった。
動きが悪いと、油をかけられた事もある。
限界だ…
もう20年なのだ。
カタカタと最後の声をあげ、私は停止した。。。
…
…
…
そう、私は『扇風機』。羽のある扇風機。
下を向いている時には、冬場に活用して欲しい。サーキュレーター代わりに。
丁寧なメンテナンスを強く希望する!
